3Dプリンターは3DCGデータを元に立体を造形し、オモチャから宝石やお菓子までも作り出すことができるが、この機会は人間の細胞から採取したバイオインクで人の臓器まで創り出すことができる。
もう何年も前から、医療研究者は人間の細胞を使って、血管、尿道、皮膚や他の生体部分も再生できるようになっている。しかし、肝臓や腎臓などの臓器をまるまる一つ、再生することは細胞構造の複雑さゆえに遥かに困難な作業だ。
しかし、3Dプリンターは臓器に必要な血管システムを正確に再現でき、科学者たちはすでに臓器の組織の断片を印刷できるようになっている。外科手術用に人間の臓器全体を印刷するにはまだ数年かかるかもしれないが、技術は急速に進化している。
実験室で人間の臓器を印刷するという行為は理解しがたく、人間が人間の一部をつくることへの倫理的問題も懸念されている。しかし、倫理的な問題にどのような判断や決着をつけるかということは別にして、この分野の研究者の多くはバイオプリンティングは将来有望であると見なしている。
印刷された臓器はワクチン等の医薬品の実験に使うことができ、合成モデルや動物実験よりもより精度の高い実験が可能になる。
3Dバイオプリンターはいつか生体移植に必要な多くの臓器を作れるようになり多くの命を救うだろう。アメリカでは毎日、18人の患者が移植手術を待ちながらドナーが見つからずに死んでいる。
科学者は生体組織又は幹細胞から細胞を採取し、シャーレーで培養する。できあがった調合物であるバイオインクを3Dプリンターに注入し、三次元の形に臓器を作る。
この方法はすでにいくつかの成功事例があり、昨年、イリノイ州において、うまれつき気管のない2才の女の子のために、その子の細胞を使って3Dプリンターで気管を創り移植することに成功した。
米国政府は心臓、肝臓、肺や他の臓器をバイオ3Dプリンターで印刷するプロジェクトに資金提供をしていいる。バージニア州の財団法人は機能する肝臓の印刷に成功した初の団体に100万ドルの賞金を授与することを昨年末に発表した。
現在、3Dプリンターの商用化実現の最有力候補がカリフォルニア州のバイオプリトベンチャーであるOrganovo(以下オルガノボ社)だ。同社はドナーからもらった幹細胞を使って医薬検査のための肝臓の再生に取り組んでいる。
同社は実験室で人間の肝臓の断片を印刷している。断片の印刷には45分かかり、印刷した細胞を増殖し成長させるのに2日かかる。つくられた組織は約40日間生存できる。オルガノボは他にも人間の腎臓、骨、軟骨、筋肉、血液や肺の組織も作っている。
多くの専門家は、移植用の3Dプリンティング臓器をつくるのではなく、次のステップとして、印刷した組織の断片を貼り付けることで、弱った肝臓やダーメジのある臓器を修復することを考えている。オルガノボ社は5年以内に3Dプリンテイングでの実証実験を開始することを望んでいる。
ブログ投稿:株式会社ユーディーアール 小椋貴央
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