現在、農業と呼ばれる耕作や牧畜は約12,000年前に始まった世界最古の産業で、いまだ最大の産業でもある。
このような長い歴史のある産業にもかかわらず、農業は天候、土壌、作物需要などの不安定要因に対応するため、人工知能技術を導入する取り組みが先進国での大きなトレンドになっている。
一例をあげるとカリフォルニア州サリナスにあるWGCIT(Western Growner Center for Innovation & Technology)は新しい農業技術の開発、実験、実験結果の現場へのフィードバック及びカリフォルニア州、アリゾナ州、コロラド州における農家の育成などに努めている。
現在までに、WGCITは15の農業ベンチャーを支援し、その多くはマシーントレーニングやディープラーニングを自社事業の課題に対するソリューションとして活用している。
WGCITのような組織は卵の格付け、自動運転農機具の改良、害虫の探知と駆除のような様々な用途にマシンビジョン(Machine Vision)を使用している。
なかでも害虫対策は農家にとって大きな問題になっている。これは先進国の消費者がオーガニック製品を好むようになっているからで、米国では2015年度のオーガニック製品の売上高が10.6%も拡大した。
オーガニックの農作物は消費者生活の向上に役立つが、農家にとっては殺虫剤や肥料に頼らない有機栽培は大きな労力を強いられる。それゆえ、先進国では新鮮な食品への需要に対応し、食の安全を確保するために、人工知能の農業への活用を推し進めている。
また食料生産者は食品に起因する健康被害の発生に責任を負っている。2015年には、大手メキシコ料理レストランチェーンのチポトレ・メキシカン・グリルの店舗で大腸菌(E. coli)による食中毒が起こってた。2015年11月に西海岸のワシントン州(北西・シアトルのある州)とオレゴン州(ワシントン州の南隣でカリフォルニア州の北隣)の43店舗を閉鎖する騒ぎになった。
食中毒の大量発生は2回おこり、最初の1回では全米11州で55人が腸管出血性大腸菌感染症O157に感染し、21人が病院に入院した。2回目の食中毒は3州で発生し5人が感染し、1人が入院した。
その後、チポトレ・メキシカン・グリルは店舗を閉店させられ、安全管理の手続を変更し消費者の信頼を回復した。同社は安全性の確保のために、食品に含まれる有害微生物の有無について、遺伝子レベルで高感度検出までさせられた。
センサー価格が下がったことで、IoT(モノのインターネット)も人工知能を推進するための原動力になりつつある。2013年には、アグリビジネスの世界的トップ企業、モンサント社が気候予測の専門会社Climate Corporationをを11億ドル前後で買収した。
Monsantoのプレスリリースでは買収金額は9億3,000万ドルとなっているが、投資家からの情報によると、Climate Corprationの従業員引き止めのための優遇策などを加えた買収費用総額は10億ドルを超える。
このClimate Corpは機械学習を利用してビッグデータを解析し、気候変動の予測など農業ビジネスのために必須な情報を提供しており、同社の気候変動監視テクノロジーが地球温暖化などマクロ的スケールにおけるリスクマネージメントに大きく寄与すると期待されている。またブドウのような高付加価値農作物では、すでに同社のモニタリングシステムが導入されている。
米国の調査会社のトラクティカ社によると、農業は人工知能の恩恵を受けて発展する産業の一つであり、同社の調査報告書”産業用人工知能レポート”によると、農業分野で使用される人工知能ソフト市場は2024年までに2015年の1,620万ドルから3億3,730万ドルに拡大すると予測されている。
情報源:Tractica社、モンサント社プレスリリース、Food Poison Journal
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Tasia Truss (金曜日, 03 2月 2017 04:57)
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